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研究・産学連携

vol.9:【特許取得】CFRP加工の常識を変える―研削援用放電加工技術-(2025.10.1)

 産業技術学部の後藤啓光准教授の研究グループは、炭素繊維強化樹脂(CFRP)の放電加工技術に関する研究を進めており、このたび「炭素繊維複合材料および積層体の加工法」に関する特許を取得しました。
 CFRPは軽量かつ高強度な材料であり、次世代を担う新素材として様々な分野での活用が期待されています。本研究で得られた加工技術は、脱炭素社会の実現に向けて我が国が掲げる「2050年カーボンニュートラル」に貢献し得るものです。

(1)CFRPの特性

 CFRPは強化材である炭素繊維とマトリックス材である樹脂から構成される複合材料であり、軽量かつ高強度であることから、次世代を⽀える構造部材として期待されています。しかしながら、その優れた特性ゆえに、加工の観点では大きな課題を抱えています。
 加工を困難にする要因としては、材料特性、加工中に生じる欠陥、工具摩耗、熱影響、粉塵問題などが挙げられます。さらに、複合材料であるがゆえに、各素材が異なる物理的・化学的性質を持つことも加工を難しくする要因となっています。
 その結果、高価な工具(例:ダイヤモンドコーティング工具)の使用が必要となり、コストが増大してしまいます。

(2)本研究の概要

 そこで本研究では、CFRPに対する高精度かつ低コストな加工を実現するため、非接触加工である放電加工に着目し、加工技術の開発に取り組んできました。一般に放電加工は、金属材料に対して高精度な加工を可能とする手法ですが、CFRPに直接適用した場合には異常放電が発生し、安定した加工が行えません。そこで、CFRPに対して安定した放電加工を実現する方法として、「研削援用放電加工」という新たな加工手法を考案し、実験的検討を行っています。
 図1に研削援用放電加工の概要を示します。炭素繊維に対しては通常の放電加工と同様に加工を行い、加工の障害となる樹脂については、荒れた電極表面を利用して研削除去し、放電加工が可能な状態へと自動的に復帰させる仕組みです。
 この加工手法を用いることで、図2~図4に示すような、他の加⼯⼿法では困難である高精度な穴加工を実現しています。


図1:研削援用放電加工の概要

図1:研削援用放電加工の概要


図2:密集した穴加工例(Φ6mm)

図2:密集した穴加工例(Φ6mm)


(a)四角形状の加工

(a)四角形状の加工

(b)三角形状の加工

(b)三角形状の加工

(c)十字形状の加工

(c)十字形状の加工

図3:異形穴加工例


(a)多数穴加工例

(a)多数穴加工例

(b)高アスペクト比(40)の加工例

(b)高アスペクト比(40)の加工例

図4:微細放電加工


(産業技術学部産業情報学科 准教授 後藤啓光/2025年10月1日)