柳田 友和さんからのメッセージ

柳田 友和さんからのメッセージ

1. 情報アクセシビリティ専攻入学のきっかけを教えてください

職場の日本視覚障害者職能開発センター 仕事を辞めて半年間、就職活動をしていたころに障害者高等教育研究支援センターの長岡先生(当時)から声をかけていただきました。 筑波技術短期大学に在籍していた頃にお世話になった長岡先生のところで、何かをやりたいと常々思っていましたし、職歴が空くよりは大学院に進学したほうがよいのでは、と考えました。

会社の合併で前職を辞めた時に、いろいろな道を探している中で、職場内でITサポートをやっていた経験を活かし、当事者による当事者支援のために起業したいと思っていました。 そのためには我流では無く、視覚障害者の情報アクセシビリティをきちんと学びたいと思っていた矢先に、声をかけていただいたのです。

情報アクセシビリティの世界で何が起きているか知りたかったのですが、それを体系的に学んでいないと、Webアクセシビリティに関する企業の方や研究者などの専門家にも尋ねられないと思っていました。 また、同じ情報障害である聴覚障害についても学んでみたいと思っていました。 短大時代には聴覚障害について知ることができませんでしたので、大学院では障害者支援(聴覚障害)コースや手話教育コースの大学院生と一緒に学べることにも期待がふくらみました。

実際に入学して痛感したのは、大学院で学ぶための準備が足りなかったということです。 短大時代には論文を読んだ経験がありませんでしたので、論文の重要性、検索方法、読み方を知りませんでした。 つまり、入学後は学び方から知ることになったわけです。

大学院では視覚障害について体系的に教えてもらえましたので、自分の知識を整理することができました。 例えば、触図がなぜデフォルメされているかとか、視覚と触覚の違いや、弁別閾など。それを学ぶ前には、盲人はごちゃごちゃのものが苦手なんだろう、などとしか思っていませんでした(笑)

2. 情報アクセシビリティ専攻での学びはいかがでしたか

大学院で学んでよかったのは、まず、調査をしようと思った時に、どうしたらよいのか知ることができたことです。 何かを要求したり、お願いをしたりする時に根拠となるデータが必要になりますが、どのように調べて、どのように提示すればいいのかを学ぶことができてよかったと思っています。 視覚障害情報保障システム特論という授業で学んだ、情報機器の調査法という資料は今も読み返します。

また、点字の大事さを身にしみて感じた2年間だったと言えます。 当初は視覚障害者の就労における満足度に関する研究をしようとしていました。 点字に関しては、身の回りにあって当然と思っていたのですが、修士課程1年目の後半くらいからやっと点字の重要性に気づき始めました。 私にとって、点字は仕事やプライベートでこれほど当たり前の存在ですが、いかに重要であるかを実感しました。 2年目に、点字がどのように使われているかのアンケートを取ったときに、点字を愛している人が多くいることがわかり、これから残していかなくてはいけないとしみじみ思いました。

大学院時代の聴覚障害者との関わりは刺激的でした。 コミュニケーションが真逆で、向こうがわかりやすいものがこちらには全然わからない、その逆もあり、そのなかでリアルタイムにコミュニケーションをとる方法を考えるのが楽しかったです。 また、視覚障害やアクセシビリティに関心のある健常者に、先生は授業でそう言っていたけど、君はどう思うの?と聞かれて、焦ることがありました。 自分の知識だけで答えられず、調べてきて翌週に答えることもあったり…。 そんな日々が刺激的で楽しかったです。

3. 研究活動はどのようなものでしたか?

私の研究は、点字が視覚障害者の就労に役立つことを証明する研究だったといえます。 結果はわかっていましたが、専門家にそうなのだと示すための資料を作ったのだと、今になって思います。 ある程度、学術的な、学問に則った資料というものを作ったのが私の研究だと思います。 その研究を通して、視覚障害者がどのように仕事をしているか、点字がどのような場面で使われて、どのように役に立っていて、そして、なぜ点字でなければいけないのか、ということを明らかにしていきました。 当時はがむしゃらにやっていましたので、このように整理して話すことはできませんでしたが、今振り返るとそういう研究だったと思います。

実は研究を開始した当初は、これまで点字のおかげで仕事ができていたことに気付いていませんでした。 点字はじり貧だと言って、指導教員の長岡先生に怒られました。 どうやってメモを取って情報を整理していたのかと問われ、初めて気づきました。

現在の仕事で、点字の有用性を示すときに、大学院で研究したことが役に立っています。 具体的に、点字を使っている人の方が働いている率が高いとか、点字が使えると仕事が楽にできるということを示すときに、データや具体例を示すことができています。

4. 現在の職業について教えてください

授業の様子(奥に柳田さん) 2010年5月に社会福祉法人 日本盲人職能開発センター(現在の日本視覚障害者職能開発センター)に入職しました。 働き始めて驚いたのは、職場で点字を知らない視覚障害者が多いということです。 視覚障害者の12.6%しか点字を使用していない、という数字は知っていましたが、その実感は持っていませんでした。 点字の習得がたいへんで手を出さない人が多いのが残念です。 私は、働こうと思っている視覚障害者にパソコンを訓練していますが、パソコンリテラシーや、各種検定の対策講座を受講する際に、盲学校出身の方でもメモが取れないのです。 弱視の人でも自分の書いたメモを読めないことがあります。 なぜ盲学校で点字を学んでいなかったのか、なぜ将来点字が必要となる方に盲学校で教えてくれなかったのか、と疑問に思ってしまいます。 点字が使える訓練生は正確な内容でメモを取れます。 目が見えなくなる人には点字を教えるべきと強く思っています。

点字の必要性をこれからも、就労者支援や、視覚障害者の支援などの集まりで訴えていきたいです。 また、点字を知りたいという人には直接指導していますが、その結果、メモが取れるようになり、仕事で役立っているそうです。 今後もそれを示していきたいです。

大学院で学んだことで現在も役立っているのは、何かを調べる方法です。 これまでの仕事では、わからないことがあったらネットや本で調べたり、上司に聞いたりすればすみました。 しかし、今の仕事では、国の施策を調べる必要がありますが、それを提言している専門家が書いた論文を読むと納得することがあります。 行政に対して何かを訴える時にも、データを示すとよいですが、大学院で論文を読んだ経験が役立っています。 調査を行った時にも、調査設計やデータの着眼点を考える時に役立ちました。

現在、ジョブコーチ(職場適応援助者)の業務もしていますが、当事者でないジョブコーチに比べて、本当の意味で寄り添うことができていると思っています。 困りごとが他人事には聞こえなく、自分がその立場でもやはり困るだろうと思ってしまいますので、ジョブコーチとして関わる時には、ピアカウンセラーの役割も果たしていると感じています。

まずは就労者本人と話して信頼関係を作れば、会社側からはその方に言いにくいことでも伝えることができています。 また、障害のある当事者のジョブコーチだから言えることもあります。 障害に甘えるな、というような厳しい言い方は当事者からでないと言いにくいでしょう。 さらに、視覚障害者である私自身が、職業指導員として会社訪問をして、視覚障害者の就業の問題を解決することによって、健常者の手助けを部分的に得ることができれば、視覚障害者は十分に仕事ができる、ということを見せることができています。