2025年11月14日 東京新聞 朝刊 朝刊茨城版 16頁 見出し 支える。学生記者川上慶悟さん24歳。 選手の本音を発信。 筑波技術大のWEBに記事。 見出しここまで。 本文ここから。 「普段の食事は?」「東京で練習し、つくばに帰るのが23時。そこから自炊は正直きつい」。筑波技術大4年で東京デフリンピックのハンドボールに出場する林遼哉選手21歳に手話でインタビューしていた。ともに学内の寄宿舎で暮らす後輩の本音を引き出す。「親しい選手なので、日本代表に選ばれたらぜひ取材したかった」  視覚障害者を含めると全学で25名ほどの学生記者とともに、学内のWEBマガジンに記事を掲載する。今大会テコンドーに出場する星野萌選手21歳は「記者仲間」で、韓国研修での経験を記事にした。  大学院で日本建築の特徴を収納面に焦点を当てて研究している。その一方で、東京・日本橋での子供向け催しでは、建築の楽しさを紹介する企画に参加した学生に取材。ろう者が暮らしやすい空間デザインを研究する学生にも話を聞いた。  今大会を機に「仲のいい選手はほかにもいて、こんなことを聞けるんじゃないかと考えながら取材しています」。まだ原稿になっていないネタもあり「早く書かないと」と苦笑い。  先天性の難聴で人工内耳を付けている。5歳で父親の仕事の都合でカナダ・トロントへ。小学校は2年まで出身地・奈良市内のろう学校。小学3年から高校卒業までは聴者と同じ学校に通った。高校は口話で英語ディベート部に入部。「おしゃべりや他の人の考え、意見を聞くのが好きで。でも聞き取れず大変でした」 「新型コロナウイルス禍が無かったら、他の大学に行っていたと思う」という。情報を全生徒に確実に伝える「情報保障」の手段を、他大学に進んだ友人から「コロナ禍でキャンパスに行けず、タブレット頼み」と聞いた。「それじゃ、ちゃんと学べないのでは?」と怖くなった。  人工内耳でもすべてを聞き取れるわけではない。「文章の一部が黒塗りされた感じ」と例える。筑波技術大では手話で意思疎通できるだけでなく「聞き返すことに、周りの抵抗がない。気後れせずに聞き返せる」。グループでの議論に参加し、コミュニケーション技術も学んだ。  学部を卒業した今年3月、大学の良さを記した長文を交流サイト(SNS)に投稿した。それを読んだ大学の広報担当者が、オープンキャンパスの情報をSNSで発信してはどうかと提案。学生記者となり、企画の提案から手掛ける。  指導する大学広報室長の若月大輔教授は「学生の主体的な活動や活躍を発信するため、学生記者を本年度から導入した。大会では選手への取材を通して熱気や感動を伝え、学生記者の中核となって活動を発展させてほしい」と期待する。  川上さんは大会でサポートスタッフも務め、東京・代々木のデフリンピックスクエアで海外選手らに日本文化をPRする予定。「盛り上がりを学生の視点で取材し、聴覚障害をめぐる社会にどんな意義がある大会なのかを伝えたい」と開幕を楽しみにしている。 本文ここまで。 デフリンピックスクエアについての説明。 大会運営本部や選手の交流、報道センター、練習会場など大会運営の拠点。15日から26日午前9時から午後8時、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターに開設する。デフスポーツやろう者の文化への理解を深め、新技術を体験する企画を用意。選手関係者エリアを除き、入場無料で公開する。 テキストここまで。