触覚ディスプレイ素子の構造


小型ソレノイド
振動型の触覚刺激を提示するために使用する1つがソレノイド振動子である。いわゆる電磁石を使えば振動刺激を発生できるので、周波数と振幅に意味を持たせれば感覚代行用の信号になる。また、空間を制御するためには同型の複数の振動子を配列する。
ソレノイド型素子を使う利点は、可動片が大きなエネルギーをもつため明確な信号を皮膚に伝達できること、電気刺激のように痛覚を刺激しないことである。一方、欠点は素子が大型かつ細かな制御に難点があること、構造的に巻線を使用するため高価である。
ソレノイドは電磁型素子であるため振幅制御のためには工夫を要する。振幅制御は工業計測用の振動発生器では使われているが、触覚ディスプレイのように複数の振動子を制御するシステムは高価、かつ、大型になってしまう。
一方、周波数を制御するには印加電流の波形を制御すればよいが、電流制御回路は電圧制御回路よりも複雑になる。また、アクチュエーションの対象は質量をもった駆動片であるため、高周波までは追従させるの難しい。振動感覚の最小閾値はおよそ200Hzであることが示されているが、小型のソレノイド素子でこれを実現するのは難しい。

小型ソレノイド素子の構造

図は感覚代行用に開発された小型振動子の構造と外観を示す。この素子の駆動原理は可動片に永久磁石を使い、コイルとの電磁力で押出された片が、皮膚に当たって反発してから再び磁石の吸引力でもとの状態に戻る構造である。したがって、可動片を吸引する逆方向の電流を必要としないこと、可動片の質量を比較的大きくとれることから確実な刺激を提示できることなどの利点がある。残念ながら、周波数は100ppsくらいまでしか応答しないが、6〜12V駆動で安定した刺激を提示できる。

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回転駆動素子
いわゆるモータを触知ピンを駆動するためのアクチュエータにする。構成法は、任意の高さを保持する触知ピンを林立させて、点字セルや触パターンを表現するために使用する。したがって、振動型の刺激を提示することを目的とするのではない。複数のアクチュエータを配列することを前提とするため、各モータは小型でなければならない。ACモータ、DCモータ、ステッピングモータ(パルスモータ)など各種の機構がある。特に、利用に関しては実用可能な素子の比較結果を参考にされたい。

触知ピンの駆動はモータの回転力を利用して接触子(タクター)部の変位を実現する。したがって、上下方向への位置変動を表現するのが一般的である。そのための位置の変換機構にはリードスクリューなどが採用される。
また、上下方向の保持は点字セルや輪郭を表示パターンでは2値駆動でも構わないが、奥行きや立体など3次元的触パターンを表現するためには接触子が多段階に保持される必要がある。しかも、精細なパターンを表現するためには搭載する可動片が多い方が好ましいが、モータにはソレノイド素子と同様に鉄芯と巻線が伴うため小型化には限界が伴う。

3D型素子の駆動機構

図に示す機構のようにモータを周辺に配置し、それぞれの回転シャフトにレリーズを接続して、その先端を収束してディスプレイを構成するという方法は触素子を密に配置する方法の1つである。
しかし、モータを配置するスペースには所詮制約があり、また、レリーズによる空間的遊びや駆動の遅れなどにも問題点が伴う。
図は、こうした配慮から開発された超小型の感覚代行用ステッピングモータの構造を示す。直径4mmで、しかもリードスクリューを介した可動片を動かすのに十分なパワーを持つので、3次元型情報提示装置に使われている。

超小型ステッピングモータの構造

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リニア駆動素子
触知ピンの変位を実現するのにモータのような回転体を使わない方法も考えられる。それは、可動片を上下運動させるのにリニア駆動素子を使うという方式である。現在のところ、工業用リニア駆動素子は販売されているが、感覚代行用の触覚ディスプレイを作るほど安価で小型ものは見いだせない。特に、利用に関しては実用可能な素子の比較結果を参考にされたい。

リニア駆動機構の原理

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空気圧制御素子
皮膚に空気圧を直接吹き付けり、触知ピンを搭載したピストンを制御して触刺激を生み出すために空気圧が利用されることもある。
ノズルから噴出する気流をボールベアリングで開閉する機構はオプタコンを開発する前段階でスタンフォード大学にいたBlissらが各種の実験で試みた研究として有名である。しかし、空気圧発生のためにコンプレッサを必要とするため、実用にはならなかった。
また、電磁バルブを使った空気圧ピストンの場合には高い周波数に追従できないという欠点が伴うが、着衣のままでも確実な触刺激を提示できるという利点もある。図は製品科学研究所(現、生命工学工業技術研究所)で初めて開発された視―触覚変換器に搭載された空気圧ピストンの構造と外観を示す。

空気圧駆動機構の原理

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圧電型素子
振動型の触刺激を提示するために使用する1つが圧電型素子である。一方、電圧を印加し続ければ一旦変位した状態を保持することができる変位保持型の素子にもなる。 構造は図に示すように、電圧の印加によって機械的歪みを起こす(ピエゾ効果)材料を絶縁体を挟んでサンドイッチ状に接着した板状の素子の一端に触値ピンを立てる。この目的のために、現在使われているのはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)という電気機械結合係数の高いセラミック素材である。これらの素子を触知ピンして複数配列すればオプタコンペーパーレスブレイルためのセルを構成することができる。

圧電素子の構造

圧電型素子の利点は高周波数でも追従できるので、周波数をパラメータにする情報提示方式に利用できること、しかも巻線がないため故障が少なく、また、比較的安価であることなどである。一方、欠点は板状の素子であるため正方マトリックス状に配列するための空間が保てないため、複数配列するには隙間が生じてしまい、したがって、均質な線や面が表現できない点、多値に変位させることが不可能である点、駆動には高圧(約200V前後)が必要であるため触ピンとは絶縁対策が不可欠となる点などである。

実際にこうした配列構造を用いているのがペーパーレス・ブレイル用の点字セルである。下図はKGS社で製品化している点字セルの構造を示す。

点字セルの組立構造

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小型電極素子
皮膚に電気刺激を伝えるには脳波計測用の皿電極に、逆に、電流を加えるという方法が最も簡単である。数点の電気刺激に対する特性を調べるにはこの方法でも構わないが、空間をパラメータとする感覚代行用に使用する場合には、小型の電極を複数使用する必要がある。図はこの感覚代行用に開発した超小型電極の外観と構造を示す。材質には銀やステンレスが使われるが、ここで示した電極は腐食を防ぐという視点からステンレスを使用している。構造が同心円状をしているのは、電流の拡散を出来る限り少なくして各刺激点の位置を明確に定位させたいためである。

小型同心円電極の構造

小型同心円電極の種類

こうした同心円電極をゴムシートに複数配列して腹部など広い部位に装着するものが感覚代行用の可搬インタフェース部である。感覚代行の目的で電気刺激を使う場合の注意点は、他の目的に電気刺激を使う場合と同様に増幅器から加わる電気系統を絶縁(アイソレーション)することで、感電を防止するということである。また、常に一様な電気刺激が加わるように皮膚とのインピーダンスを一定に保つ必要がある。このため、脳波計測用の導電ペーストを利用する場合もある。
電気刺激を効率よく伝えるための駆動波形の研究もなされている。たとえば、パルス波形をプラス、マイナスの双極生にするなど工夫を凝らした伝え方もある。

電気刺激素子への電流の加え方

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超音波駆動素子
電磁力によらない回転力をを得て、アクチュエータを駆動するために超音波モータを利用するという考え方もある。図は超音波モータの原理を示す。

超音波モータの駆動原理

超音波モータはまだ開発段階にあって、今後、実用的製品が出現するであろう。それゆえ、触覚情報伝達についてもまだ構想段階にとどまっている。特に、素子の実用に関しては実用可能な素子の比較結果を参考にされたい。

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実用可能な素子の比較
これまでに指摘した、触覚ディスプレイのための触刺激素子には各々に長短がある。それをまとめると以下の表に説明するようになる。

各種触刺激素子の比較


また、スタティック型触覚ディスプレイのための触知ピンを制御するアクチュエータにも各種のものが利用可能である。現時点で実用可能な素子を比較・評価すると、以下にまとめることができる。

各種アクチュエータの比較

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