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聴覚障がい児・者からみた
本システムの利用ニーズ
~聴覚障がい利用者への
アンケート解析結果から(中間報告)~

 私たちは、モバイル型遠隔情報保障システムについて、その長所・短所を的確に把握し、聴覚障がい児・者の皆様各々のニーズに沿った使用場面で本システムを普及させていくべきであると考えています。

 そのため2009年秋より、本システムを利用したことのある聴覚障がい児・者の方々にご協力していただき、アンケートを行っております。これまでに34名(有効回答数30名)の方から回答をいただきました(2010年2月末現在)。

図1 3つの情報保障方法に対するイメージ アンケートは以下の2つで構成されています。
1)手書き要約筆記、パソコン要約筆記、本システムの3つのイメージ評価。 それぞれ17のイメージ語の対について1~7の範囲で評価。
2)6つの場面(図2参照)において、手書き要約筆記、パソコン要約筆記、 本システムの「使いたい度」を1~7点で評価。またその点数をつけた理由を記述。

 イメージ語の対に関する回答結果から、本システムについて、聴覚障がい利用者は下記のようなイメージを抱いていることが明らかになりました。(カッコ内は相当すると思われるイメージ語)

A) モバイル性への高い評価(「小さい」、「軽い」、「運びやすい」)
B) 斬新さへの高い評価(「新しい」、「かっこいい」)
C) 遠隔通信の持つ特徴に対するイメージ
C-1: 通信網を利用した際のデメリット (パソコン要約筆記と比較して「遅い」、「不安定な」)
C-2:情報保障者の同席がないこと
「のびのびした」気持ちを味わえる一方で、確認したいことがあるときにいない、トラブルが生じたときにいないなどの点で、「不親切」「頼りない」といったイメージを抱いているのではないかと思われます。

図2 場面別にみた各情報保障の「使いたい」度  各場面における「使いたい度」については、それぞれの情報保障に対し5点以上の点数をつけた人の回答者全体に占める割合を算出してみました(図2参照)。同システムは、5や6などのように、移動しながら情報保障を必要とする場面で利用ニーズが高いと言えるでしょう。理由の記述からは、「少しでも余計な荷物は持ちたくない」「移動しながら手軽に見られる」「ある程度詳細な情報を必要とする」「通訳者が一緒についてきてほしくない」といった条件がそろったとき、他の情報保障方法と比べて本システムを使用したいと感じていることがうかがわれます。

 100%近い情報量をできるだけリアルタイムに必要とするかどうかは、聴覚障がい者自身にも発言が求められる場であるかどうかでも変わってきます。そのため発言を必要とする場では、本システムよりもパソコン要約筆記の選択に傾いたと言えるでしょう。

 ただし、個々の回答結果を見ると、大きなばらつきがありました。理由の記述から、本システムを使用したいかどうかについての聴覚障がい児・者自身が持つ要因は次のようなものだと言えそうです。

1)聴覚障がいの程度:聴覚活用と要約筆記を併用し、必要な部分だけ要約筆記での対応を望む人もいます。そういった利用の仕方に同システムは不向きであると言えます。

2)聴覚障がい者としての障がいのとらえ方:情報保障が必要なことをはっきり周囲に知らせようとするタイプの人は、リアルタイム性や情報量を考慮して、PC要約筆記と同システムを使い分けたいと考えています。これに対し、聴覚障害であることをあまり周囲に知られたくないと考えるタイプの人は、、リアルタイム性や情報量よりも目立たないという長所を重視し、ほとんどすべての場面において同システムの仕様を希望します。

3)日本語の力:たくさんの日本語を読むのは苦手というケースでは、詳細な情報入力を必要としない場面であれば、パソコン要約筆記ではなく同システムで十分対応可能と答えています。

 聴覚障がい児・者らは、このような本人側の要因と、イメージ語の対に関する回答結果で得られたように、同システムについて聴覚障がい児・者が感じている長所・短所の各要因を複合的に吟味し、本システム使用の適・不適を判断していると言えそうです。

国立大学法人 東京大学先端科学技術研究センター
人間情報工学分野

特任助教 中野 聡子

2010年5月31日

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